当医院の治療方針の具体的な一例として、解熱剤のお話をします。
解熱剤の使用につきましては、法的に決まっている訳ではなく、最終的には各個人の医師の責任と判断に委ねられています。
子供の病気のほとんどは、ウイルスや細菌(=バイキン)が身体の中に入り、悪さをすることによって起こるものです。
それらのウイルスや細菌を焼き殺してやっつける武器が「熱」なのです。
細菌に対しては抗生物質という強力な別の武器があります。
また、一部のウイルス
- インフルエンザウイルスに対してはタミフル
- 水ぼうそうウイルスに対してはゾビラックス
のような特効薬があります。
しかし、それら以外の多くのウイルスである、普通の風邪のウイルスや嘔吐下痢の原因となるロタウイルスなどには特効薬がありません。
効く薬がないウイルスをやっつける武器は、自分が出す熱しかないのです。
42度までの発熱であれば、その熱が何日続こうとも、我々の身体は障害を受けることはほとんどありません。
しかし、例えば、インフルエンザウイルスは40度でほとんどのウイルスが死んでしまいますが、37度では喜んで増殖します。
なので、解熱剤を使って無理やり熱を下げてしまうと、増殖したウイルスによって病気がより重症になってしまう危険性があります。
ウイルスをやっつけて、その後片付けが終われば、自然に熱は下がります。
子供さんが急な発熱を起こした時、ご両親はとても心配になります。
しんどそうで可哀そう、食欲もなくなるし・・・
といったご意見もよく伺います。
そのお気持ちはよく解るのですが、見方を変えれば「しんどくなる = 子どもはじっとして動かなくなる」ということで、安静にしているのです。
病気から回復するために最も大切なことは安静にすることであり、食欲が無くなれば胃腸を休めることになります。
子供さんが熱を出す場合は胃腸も疲れていますから、必要最少量の水分だけ摂取して胃腸を休めてあげる方が早く回復します。
4~5日間くらい絶食しても、一時的に痩せますが、栄養学的にはほとんど問題はありません。
元気になってモリモリ食べ出せば、体重は直ぐに戻ります。
また
熱性ケイレンが心配・・・
というご意見もよく伺います。
しかし実は、解熱剤を使って熱を無理やり下げると、薬が切れた時に急激に発熱しますので、それが刺激となり、かえって熱性ケイレンを起こす原因となることがあります。
なので、熱性ケイレンを繰り返すお子さんに対しては、ケイレン予防の目的では、抗ケイレン剤(ケイレンを抑える薬)を使用します。
以上は、私の今までの経験や日本小児神経学会のガイドラインに基づいた私見です。
ご質問等がございましたら、当院受診の際にお気軽にお尋ねください。